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余白の色

平面の表現には、油画や水彩画、日本画、ペンや鉛筆画、コラージュ等様々な手法がある。

いま上に上げた平面手法は、ほぼすべて、紙やキャンバスにプラスする方法といえる。

真っ白な0%の空間に、色や線を付け加えることで100%の画面を作りだす。

 

切絵は平面でありながら、マイナスする手法だと思う。

100%の紙から、空間を切り抜くことで、どんどん余白を生みだす。

私はこの余白が好きで、切絵をやっているようにも思う。

 

この余白にも、すべからず色を着けて表現する方法も勿論ある。

それによって、単色(モノトーン)ではできない表現も可能になる。

 

だが、切絵の求めるのは、そこでは無いように感じている。

リアルな陰影や色彩を求めるならば、油画や水彩画の表現の方が向いている。

切絵には切絵にしかできない表現を求めなければならない。

 

「余白に、色が見える気がする」

 

以前、私の切絵を見た人から云われた言葉である。

これは何よりも褒め言葉だと感じる。

この余白の感覚は、他の平面手法には表現できない事だから。

 

彫刻は切絵と良く似た表現だし、写真の表現にも近いものがある。

小説なんかでも、文章と文章の空間、余白に色が見えることがある。

しかし、やはり切絵とは違うのだ。

 

限られた空間と限られた紙の中で、多くの制約を抱えながら、

モノトーンの中に色彩を求める、そんな表現が切絵なのだと思う。